CREATOR'S INTERVIEW クリエーターズインタビュー

#01

自分自身と、向き合い、自分らしさを表現していきたい。

元 圭一Keiichi Moto
写真家
アートは、どこからきて、どこにやってくるのか。個性的で、自由で、自分を表現するもの。ここでは「one's art」のアーティストや作品に触れたクリエイターが感じたこと、思ったこと、発見したことについて、インタビューを行っています。今回のゲストは「写真家」の元 圭一さん。どんな世界観を見せてくれるのでしょうか。

クリエイターになるきっかけと、今の仕事

学生時代にバックパックを背負って旅をする中で、さまざまな文化に触れ、多くの人々と出会い、世界中を旅できる仕事が自分にとって求めているものかもしれないと漠然と考えていました。その中でたどり着いたのが「写真家」という仕事です。現在では、写真撮影だけにとどまらず、広告の企画やTVコマーシャルの映像制作など、仕事の領域は多岐にわたっていますが、年に5〜6回は海外に足を運び撮影を行っています。旅先で感じたことや気づいたものを、映像をはじめとした仕事に活かしています。日本にはない感情や感覚、考え方に触れることで、現在世の中で叫ばれている「多様性」というものを実感しています。

仕事で大切にしていること

これはどの仕事にも当てはまることかもしれませんが、誰がやっても同じ仕事というものは、僕自身「ない」と感じています。カメラの性能が同じものであっても、シャッターを切った結果はきっと同じ作品にはならないでしょう。そこには自分らしさが投影されていると感じています。これまでに自分が感じた気持ちや気分、感覚に素直になり、常に新しい視点を持ち、フラットで固定概念にとらわれない視点をインプットするよう心がけています。個人的な話ですが、キャンプや自転車、SUPなど、さまざまな体験をすることが、好きですね。きっと、生まれてからこれまでに経験してきた想いが写真に宿っている、そんな気がしています。

2018年に全国商工会のお仕事で、北は礼文島から南は与那国島まで47都道府県を約半年間かけて撮影する旅をしました。日本に生まれた、日本で育った僕ですが実際に足を運び、そこにある風景や歴史、文化や人に触れたことで日本人であること、日本という国を初めて実感したように感じました。その時撮影した厳しい冬の町や、美しい森、自然の中で動物と共存する人たちなど、僕の写真家の人生に大きな影響を残してくれた仕事でした。

one’s artというプロジェクトについて

まだ世間にはあまり知られていない「one’s art」というプロジェクトですが、社会的に見ても非常に意義があり、可能性を感じるプロジェクトだと思います。今回、僕は3名のアーティストの日常や制作現場を拝見し、実に魅力的な3名の内面を知ることができ、とても光栄でした。社会や世界を彼らの視点を通して見て、感じ、発見することができれば、世界はもっと良く、価値のあるものになるのではないかと思います。僕たちが普段当たり前と見過ごしている視点も、彼らを通せばきっと新しい価値を持つものになるに違いありません。アートの持つ力は、健常者と障がい者の間に垣根を作ることはありません。一度、彼らのアートに触れれば、それはきっと伝わると思っています。

クリエイターから見たone’s art projectの作品

はじめてみた時、鬼頭くんの「いりこ」の絵が印象的でした。鬼頭くんの取材撮影の際に、ご実家の2階にあった、額に入ったサイズいっぱいに並んだ数多くの「いりこ」の絵から目を離すことが出来ませんでした。「いりこ」自体をモチーフにするその視点も面白いと思いましたし、しかも「いりこ」も、一つ一つ顔が違う。僕には一生描けない絵だなと素直に感じました。

鬼頭さん、細木さん、今田さん3名のドキュメント映像を撮影させていただきましたが好きなモノへ向き合う力に感動しました。鬼頭さんは、ペンと紙に全身全てのエネルギーをぶつけている姿に魅了されました。気づけばその姿に僕が引き込まれてどんどん寄って撮影してしまうほどでした。細木さんは、自分の考えたストーリーを絵本にしており本当に楽しそうに語ってくれました。キャラクターのデザインや構成はとても魅力的で、そのまま直ぐにでも出版できるのではと思いました。今田さんは大好きな猫のにゃんちと触れ合っている時間は本当に幸せそうで、その幸せな感情を素直に絵に置き換えているのだなと感じました。純粋なartで、皆さんの可能性は、計り知れないと思います。

鬼頭純平《いりこ48》

​artのチカラとは

いまある社会の仕組みや文明やお金よりも崇高なものだと思います。少し大きなことを言いますが、人間が人間であるために最も必要な要素の一つではないでしょうか。artは、僕たちの中に眠っている創造性を呼び覚まし、新たな世界への扉を開いてくれるものだと思います。例えばキャンバスに自由に絵を描く、粘土で形を作る、楽器を奏でる、言葉で物語を紡ぐ…それらの行為を通して、僕たちは自分自身と向き合い、独創的なアイデアを生み出すことができます。それは、まるで自分だけの世界を創造しているような、そんな特別な体験じゃないかなぁと感じています。

PROFILE

元 圭一Keiichi Moto

1976年広島県生まれ。写真家・操上和美に師事。2006年に写真事務所CACTUSを設立し、写真家としてのキャリアをスタート。2013年に株式会社Life Marketを設立し、代表取締役に就任。広告企画制作、写真撮影、CM映像制作を中心に活動している。【主な受賞歴】カンヌライオンズ国際クリエイティブ・フェスティバル2015年ファイナリスト、日本広告写真家協会主催 金丸重嶺賞(2010年)、美しい日本賞(2020年)、経済産業大臣賞/美しい日本賞(2022年)。その他、全国中小企業団体中央会会長賞・奨励賞(日本印刷産業連合会主催)、広島県知事賞、広島広告賞、HADC賞など、入選多数。